- 2000-02-22 入院日記
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なんていうのを書いてみようかと思ったり。
今回の入院は抜釘(ばってい; 骨折治療のために入れたプレートを取り出すこと)手術
なので、そんな長期間の入院でもないし、大した事件も起こらないだろうけど、
せっかくパソコンを持ち込んだんだから書いてみようかと。
過去に手術が必要な骨折は2回してて、内1回は抜釘も終ってるから、
今回の抜釘で入院は4回目。これが抜ければ晴れて真人間である。
さすがに入院も4回目ともなると、慣れたもので(嫌な慣れである)、
入院に何が必要で何が不要か分かって来る。必要なのは衣類と、小さなヤカンと、
そして本やゲーム類。時間は余るほどあるのだ。
…と思いきや、実際に入院してみると、いろいろ忘れ物をしたことに気が付いた。
コップと箸。箸なしでどうやって食事するというのか。
ヤカンから熱いお茶を直接飲むつもりなのか。我ながら愚かである。
初心者でもなかろうに。
- 2000-02-23 手術当日
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手術当日の朝。今まで経験した手術に比べ軽そうだし、抜釘だし、特に緊張している
訳でもない。
今回は、全身麻酔でも腰椎麻酔でもどちらでも出来るよと言われ、腰椎麻酔で行ってもらうことにした。
腰椎麻酔というのは全身麻酔みたいに完全に感覚が遮断される訳ではなく、
「あ、なんか痛いこと始めやがった。切ってるな」
「すげーゴリゴリ痛い。骨に何かしてやがるな」とかが分かる麻酔である。
あまり良い気分ではない。というか積極的につらい。
それでも寝てる間に全てが終るより何が起こってるか分かる方がいいかと思い、
腰椎麻酔を選んだ訳だが、やはり手術が始まると少し後悔した。
人間、辛いことが実際に起こるとこんなもんである。
手術が終り、集中治療室へと運ばれた。医者の会話によると、多分、
笑気ガスを使われたみたいで、なんか意識はもうろうとしている。
足はまだ麻酔が効いてて、自分の足じゃないみたいだ。
手で触ると妙に弾力質で、足の側の触覚がないだけでこうも感覚が変わるもんかと思った。
毛が剃られてツルツルの足、しかも「他人の足」を触ると何か特殊な感情が湧くかと
思ったけど、傷の痛みもあり、とてもそんな気分では無かった。
- 2000-02-24 翌日
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昨夜はあまり深くは眠れなかった。痛みもあるし、足が思うように動かないので
寝る姿勢が変えれず、腰も痛かった。
足は指先が動かせる程度。
昨日は自分の意志では全く動かせなかったので、もしや神経切られたのではとか思ったけど、どうやらつながってたらしい。
朝、手術前からずっとされつづけている点滴の交換があった。
作業が終ってフとチューブを見ると、気泡が大量に自分の腕に向かって来る。
これでナースコールしてしまう人も多いみたいだけど、これは別に問題無いと聞いている。
- チューブを通る気泡は、タコツボと呼ばれる途中に設けられた部屋に
トラップされて、血中に入ることはない。
- しかも多少血中に入っても溶けてしまってどうということはない。
…という知識があったので、落ち着いて気泡がタコツボに入るのを観察していた。
そうしたら何故かタコツボをすり抜けて腕の中に入っていくではないか!
慌ててチューブを指でつまんで流れを止めようとしたけど、間に合わず、
気泡はアッというまに腕の中に飲み込まれてしまった。
結構な量だったけど大丈夫かなぁ…。これは「多少」の内に入るんだろうか?
まぁ看護婦呼んでも、済んだことだし、大丈夫大丈夫と言われるだけだろう、
ということで気にしないでおくことにした。死にはしないだろうし。
夜になるとかなり痛みも楽になり、こんな日記やメールを書く余裕も出来た。
手術後1日でこうなるとは、やはりかなり楽な手術であった。
- 2000-02-25 3日目
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とかいうサブタイトルだと推理小説みたいである。
っていうかここんとこ暇にまかせて推理小説読み漁ってもう
20人位殺されたってゆーかー。もう殺し飽きたって感じぃ〜。
今回の入院に本はたくさん持って来たので、まだまだストックがあるけど、
しょーもない忘れ物がまた発覚。フリカケと洗面器。
フリカケは、飽きるし自由に選べない病院食のオトモである。基本であった。
洗面器は、どうせ風呂入れる頃には退院だろうってのと、
風呂に洗面器くらいあるだろうと推測して持って来なかったんだけれども、
普通の洗面所で頭を洗うという入院患者の必須テクで使用することを
忘れていたのである。
コップで頭洗えってか。
- 2000-02-26 眠い雪
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前日あんまり眠れなかったので、昨晩はめちゃくちゃ眠くて、23時頃にはもう熟睡。
1:00
2:00
3:00
3:15
4:20
5:15
5:30
6:15
…さてクイズです、これは何の時刻でしょう?
(答え)隣のジイさんが、照明付けて、時計みたり用を足したりした時刻。
仕切りは薄いカーテン1枚なので、私も当然目が覚める。
用を足したりしてるみたいなので、「するな」という訳にも行かず、
途中から怒りを通り越して思わずログを取ってしまったのが上の記録。
しまいにゃ「カラン」とかいってシビンを落す事が聞こえて来て、
思わず「流れて」来るかとベッド下の荷物を退避したり。
ログを取り始める前にも一度起こされてて、その時はまさかログ取ろうなんて
思ってなかったので、時刻は不明。でもこの等差数列っぷりから考えるに、
ちょうど 0:00 くらいだったと推測される。
とりあえずまぶしさと物音の両方で目が覚めるので、今晩は
段ボールハウスと耳栓で対抗しようかと計画した。
耳栓で音を遮断し、ベッドに段ボール箱をかぶせて光を遮断して、
外界でジイさんが暴れようが核燃料が臨界越えようが平気と言う寸法である。
ちょうど医者が回診に来る日だったので、外出許可を取り付けて、
段ボールを漁りに出かけた。やってることはまるっきりホームレスと同じである。
ひさしぶりに吸うシャバの空気は…冷たい。寒い。
病棟内はTシャツ1枚で過ごせる位暖房してあるので、温度差が辛い。
と思ったら雪降って来たし。思わず傘をさした。
傘、か。病院内ホームレスというみすぼらしい事態は避けられたかも。
その替わり、ベッドの上でビーチよろしく傘さして寝る変人が出現する予定である。
- 2000-02-27 ずつい雪
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耳栓+傘作戦はおおむね成功。一度しか起こされなかったし。
日曜はさすがに病院のスタッフも少なく、食事も温めただけ的なメニューでイマイチ。
でもこの病院はまだメシはいい方で、以前に入っていた大阪の病院では、
毎日がここの休日メニュー以下の物体であった。
そんなことを思い出しながら昼食。外をみると日が照って暖かそうな感じである。
外出しようと思ってたのでイイ感じって感じ〜。(脳溶)
外出届けを出し(外出は許可制なのだ; 全寮制高校以下である)、
病院を出てみるとパラリと雨。んー、こんなに強力な雨男だったかなぁ?
この病院のそばには本屋は駅前に1軒しかなく、しかもかなり小さくて、
一応探してみたけど欲しい本がまるで置いていない。
仕方ないから電車に乗ってみることにした。
とりあえず最低料金の切符を買って大阪方面に一駅行くと、
「八幡」という駅に着く。なんとなく製鉄所とかがあって
開けてそうなイメージである。大きな本屋があるかも。
と思って降りてみたら、駅前には全く何もない。
なんか知らんが神社みたいなのと、ケーブルカーの乗り場しかない。
このケーブルカーに乗れば本屋ごときには不自由しない大都会に…出るはずはない。
失意のまま、出たばかりの駅に戻る。
なんだか頭が痛くなってきた。比喩的表現ではない。以前にも、
腰椎麻酔の後にしばらく頭痛が伴った事があるので、それかも知れない。
こんどは京都側に行ってみることにした。2駅程行くと、「伏見桃山」。
今度はちゃんと電車の中から駅周辺を観察し、
大きなアーケードがあることを確認してから下車した。
が、本屋がない。
あるにはあるが、小さいのが2軒あるだけで、読みたいと思えるような本はなく、
これなら病院の近所にあるのと大差ない。
仕方なく、(病院の近所にはない)ゲーセンに入ってみる。
"パカパカパッションスペシャル"か"アクアラッシュ"があればいいのだけれども、
そんな最新作がありそうな気配はなく、そのうち一度はやってみようと思っていた
"タイピングオブザデッド"を遊んでみる。素直に笑える良作かも。
ただしキーボードはフニャフニャで、マイキーボードつなげさせやがれ感が強かった。
そうこうしてる内に点滴しに帰らないといけない時間になった。
電車に乗ると頭痛がひどくなってきた。しかも降りた途端に雪がパラつく。
買った本を入れるはずの鞄は空。何しに出かけたんだろう…?
(答え)タイピングオブザデッド
- 2000-02-28 ずつい康隆
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昨夜も耳栓+傘作戦を実行するも、どうも眠れない。というか起こされる。
相当強力な睡魔がいないと、傘程度ではふさぎきれない様だ。
見舞いに来てくれた同僚のアドバイスで、アイマスクの導入を考える。
そんなの目に当ててたら気になって眠れないんじゃないかと思ってたけど、
どのみち眠れないなら試す価値はある。
病院の売店で探してみたけど、売ってない。普通のマスクは売ってるのに。
「マスクとハンカチで作れば?」
「そのマスクとハンカチで原因のジジイを窒息せしめるのはどう?」
「濡らすのを忘れないようにね。」
といったハートウォーミングなメールが飛び交う。
そうこうしてる内に、何故かジジイは別室に引っ越しになった。
病状が変化したのか、ローテーションすることになってるのか、
殺意に勘づかれたのか分からんケド。
とにかく、平和は訪れたらしい。
これで売店でアイマスク売ってたら危ない所であった。
- 2000-02-29 ずついコーヒー
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タバコは吸わない。理由として、きっかけがなかったこと、
ハマるとやばそうなこと、そして無駄に高いことが挙げられる。
だいたいあんなしょーもない作りの製品がなんで一箱200円以上するねん。
自己満足のために一日200円ずつ使うなんてモッタイナイ。
…と思ってたけど、コーヒー1杯飲んだらもうそれ以上なのね。
という当たり前の事実に気がついてしまった。
病院の中ではと、コーヒー代くらいしか現金の使い道がないのだ。
頭痛は相変わらずある。体を起こして2時間くらい普通に活動していると、
痛くなって来る。ベッドに寝ると直る。
これじゃ仕事もままならない…なんてのは
2時間ごとに横になったりしたら怒られる「ちゃんとした」会社に勤めていて
初めて言えるセリフだろう。
私の会社にはあんまり関係なさそうなので、そろそろ退院したい所である。
担当のセンセに聞くと、一応退院できないこともないけど、
抜糸するまでは毎日消毒に来なければいなけいと言う。
うーん、わざわざ京都の病院を選んだことを少し後悔する。
まぁ無理して早く退院した所で、やることと言えば、
2時間ごとに休憩しながら仕事する(または遊ぶ)ことになるので、
それならもうちょい入院しててもいいか、と結論づけることにする。
昼からは外出して本屋+タイピングオブザデッド。
このゲームの面白みは、真面目に変なカッコしてる主人公(コスプレ簡単そう)と、
変な単語である。と思う。前者はもう堪能したので、私にとってはもう後者しかない。
それはそれとして、自分がまだヘタなのもあるけど、
どうも1コインでクリアできるようにはなってない気がする。
うまくなれば1コインクリア、というのは古風な考え方なのか?
しかし他にやるゲームがない。もうちょいマトモなゲーセンが欲しい所である。
- 2000-03-01 ずつい・汚い・危険
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退院が決まった。明日抜糸、あさって退院。
抜糸できるかどうかは、基本的には縫ってから何日目って決まってるみたいだけど、
最終的な確認は医者が目視で行う。
この作業は、具体的にどうするかというと、
「縫ってある傷口を指で少し押し広げてみる」
ということになる。これでどうもなければ糸を抜いても問題なかろう、
ということらしい。
毎回(骨折2回で出し入れ4回やってるとこんな言葉を使いたくなる)、
この確認をする時に「ぱっくり」いってしまうことはないのか、と恐くなるが、
幸いまだそうなったことはない。
昨日買って来た本は2冊とも今日中に読み終りそうなので、
また買いに行かなければなるまい。
と思ってたら、看護婦に「前田さん、毎日外出してますねぇ。困るんですよ」とか言われた。
何か困ることあるの?と聞いたら、それだけ元気なら退院できるやろ、
ということで保険の無駄使いになるらしい。そういうこともあるのか。
なんだか真面目に外出届けを出して外出してたのがバカみたいである。
これからは無断で外出することに決めた。
- 2000-03-02 退院イブ
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抜糸した。バシシではない。
抜糸は手術や筋肉注射に比べれば全然痛くなくて、
ヘタクソな点滴の方が痛いかも知れない、という程度の痛みである。
特に「ぱっくり」いくこともなく、無事に終った。
暖かい。本を買いに出かける。もちろん無断外出である。
タイピングオブザデッドを数回やる。3面がどうしても 100 円では越えられない。
何らかのブレイクスルーが必要な感じである。
一文字ずつ読み上げるように入力するのではなく、
フレーズとしてタラタラっと続けて入力しなければ間に合わない気がする。
フと、携帯電話の積算料金を見てみた。入院する時にリセットしておいたので、
今回の入院でいくら使ったのか分かるはずである。…4000円!? そんなに使ったのか…。
音声通話は全くのゼロなのに。
退屈しのぎに java でも習得するか、と思って
jdk (11MB)をダウンロードしようとしたりしたのがいけなかったのかも知れない。
しかもダウンロードはバッテリ切れで失敗するし。
しかし java VM の機械語で 00h が NOP になってるのを知って、なんとなく
Z80 を思い出してしまった。
今でも 21h, c3h, cdh, c9h 等、いろいろ覚えているものである。
簡単なプログラムなら書けるかも知れない。
今後、機械語を16進で覚えてしまうなんてのはもう一生ないんだろうな、と思う。
ゼビウスの敵キャラクタ名を覚えるのも然り。
- 2000-03-03 ひなまつりまくり
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昨日抜糸した部分を点検して、何も問題ないですね、退院して下さいってことになった。
これだけのために一晩入院したのか…。いい加減なものである。
退院するとなったら、特に何も事件はない。頭痛がどの程度か心配って程度。
なんか今回の入院は痛みも少なく、非常に楽であった。
これならまたヤッてもいいかなとか一瞬思ったり。いかんいかん。
短い間でしたが、みなさま御静聴ありがとうございました。